一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

一人読書会『アンナ・カレーニナ』(トルストイ)④ ……第2部、1章~11章……

 

一人読書会『アンナ・カレーニナ』の4回目は、

第2部の1章~11章を読んでみたいと思う。

 

第1章

 

冬の終わりにシチェルバツキー家では、キティの健康状態を判断し、衰弱から回復させる方法を検討するための、立合い診察が行なわれた。彼女は病んでいて、春が近づくにつれて体調が思わしくなくなってきたのだった。かかりつけの医者の処方はどれひとつ効果がなく、有名な医者の診断を受けてみようということになった。やってきた有名医は、まだ若い、たいそうな美男子で、診察し終わると公爵と話をした。公爵は医学を信用せず、内心でこの茶番劇に腹を立てていた。ましてこの父親だけがキティの病気の原因を理解していたからなおさらであった。有名医は、ゾーデン水による治療計画を立てたが、それを選んだ理由は、明らかに無害だという点にあった。夫人が外国への転地の有効性についてたずねると、医者は、転地してもいいが、何事につけても自分に相談すべしと答えた。医者が帰ったあとは、母親は明るい顔になり、娘も陽気になったふりをした。「本当にわたしは健康なのよ。お母さま。でももしお母さまが旅行に行きたいんなら、行きましょうよ!」と言った。

 

2章

 

医者と入れ替わりにドリーが訪れた。この日立合い診療があると知って、今日決定されようとしているキティの運命を知ろうと出かけてきたのだった。だが、母親から伝えられた医者の所見で興味を引いたのは外国行きが許可されたことぐらいだった。ドリーは思わずため息をついた。いちばん親しい友である妹が、こうして旅立とうとしている。しかも自分の人生はつらいことばかりなのだ。夫オブロンスキーとの関係は、和解以来屈辱的なものとなっていた。オブロンスキーはほとんど家にいつかず、家庭はほとんどいつも金に困っていた。老公爵が書斎から出てきて、ドリーと言葉を交わした後、キティに「いつかそのうち良いお天気の日に、朝目が覚めたら自分にこう言ってみなさい̶̶わたしはとっても元気で気分が良いから、ひとつまたお父さんと一緒に寒い朝の散歩に行ってみよう、とね。どうだ?」キティには何かを答えるだけの元気がなく、口を開きかけると急に泣きだしてしまい、そのまま部屋から出て行ったのであった。「あなたが冗談なんかおっしゃるからよ! あの子はひどい目にあったのよ、かわいそうに、あんなひどい目に。なのにあなたは、そのわけをちょっとでもほのめかされるだけでどんなにあの子が傷つくか、まるで感じていらっしゃらないんですから」と、夫人が公爵をとがめた。すると、公爵も、「すべてに責任があるのはおまえだ。おまえが、おまえ一人が悪いんだ」と言い返した。公爵が部屋を出て行った後、ドリーは母親に言った。「お母さま、お母さまは気がついていた? あのリョーヴィンさんが最後にいらした晩、キティにプロポーズされるつもりだったの」「そうだったのかい? わたしにはわからない……」「だからね、もしかしたらキティはその話をお断りしたんじゃないかしら? もしもう片方の人がいなかったとしたら、きっと断らなかったはずよ。なのにその後で、その片方の人があんなにひどくあの子を騙したんだわ」。夫人はもはや恐ろしさのあまり、自分が娘にどれほど悪いことをしたかと考えることさえできなかった。

 

3章

 

ピンク色のキティの小部屋に入ったドリーは、「あんな人なんて、あなたがくよくよ悩む値打ちはないのよ」と、まっすぐに本題に触れた。「ああ、そんな風に同情されるのがいちばんたまらないわ」キティは急に腹を立てて叫んだ。「わたしは悲しむこともないし、慰めてもらうこともないわ。わたしはプライドが高いから、自分を愛してくれない相手を愛するようなまねもけっしてしません」。妹の手をとってドリーは言った。「ねえ、リョーヴィンさんはあなたに打ち明けたの?……」。リョーヴィンの名前が出たことで、キティは最後の自制を失ってしまった。「なんでリョーヴィンさんまで出てくるわけ? なんで姉さんはわたしを苦しめなくてはならないの? わたしはプライドが高いの。だからけっして姉さんのようなまねはしないわ。自分を裏切って他の女の人を愛した人とよりを戻すなんて。わからない、そんなの理解できない! 姉さんにはできても、わたしにはできない!」。ドリーはしょんぼりとうなだれて黙り込んだ。二分ばかり沈黙が続いた。キティは自分の言葉が姉を深く傷つけたことを理解したし、姉が自分を許してくれたことも理解した。ドリーも知りたかったことをすべて理解した。キティの癒しがたい悲痛の種は、リョーヴィンがプロポーズしてくれたのに自分が断ったこと、しかもヴロンスキーからは騙されたことにあった。そしてキティはリョーヴィンを愛し、ヴロンスキーを憎む気持ちになっていた。

 

4章

 

ペテルブルグの上流社会は本来はただひとつしかないのだが、この大きな上流社会は、おのずともっと小さなグループに分かれており、アンナの友人や親しくしている相手も、三つの異なったグループに分かれていた。一つは夫の仕事関係の公的なグループで、夫の同僚や部下たちから成っていた。アンナに近いもう一つのグループは、夫のカレーニンの出世の母体となったグループで、中心を占めていたのはリディア・イワーノヴナ伯爵夫人であった。三番目の、最後のグループこそが、本来社交界と呼ぶべきものだった。アンナとこのグループをつないでいるのは彼女の従兄の妻であるベッツィ・トヴェルスカヤ公爵夫人であった。初めのころアンナはこのトヴェルスカヤ公爵夫人の社交界を(経費がかかる等の理由で)避けていたが、モスクワ旅行の後では事情が逆転した。そこで彼女はヴロンスキーと顔を合わせ、会うたびにわくわくするような喜びを味わった。二人がいちばんよく出会うのはベッツィ夫人の家であったが、それは夫人がヴロンスキーの従姉だったからである。ヴロンスキーはアンナに会える場所ならどこへでも顔を出し、機会さえあれば彼女に自分の愛を打ち明けた。アンナも彼に会うたびに、あの日はじめて彼を見たときに汽車の中で感じた、あの生き生きとした感情の火花が燃えだすのだった。有名な女性オペラ歌手の二度目の公演で、ヴロンスキーは従姉のベッツィの姿を見つけ、幕間を待たずに彼女のボックス席に入っていった。ベッツィから食事に来なかった理由を問われ、「じつはぼく、ある夫とその妻を侮辱した男との間に立って、仲裁役をやっていたんですよ」と言った。「どういうことか聞かせてくださいな」とベッツィは言った。

 

5章

 

「二人の陽気な若者が馬車に乗っていました。これから友人の家の晩餐会に出かけるというので、すっかり上機嫌だったのです。見ると一人の美しい女性を乗せた辻馬車が彼らを追い抜いていく。そして追い抜きざまにその美女がこちらを振り返り、お辞儀をして微笑みかけた̶̶少なくとも彼らにはそう見えたのです。二人は当然その女性を追いました。すると驚いたことに、女性はまさに彼らが訪ねようとしていた建物の入り口で馬車を停めたではありませんか。そうしてこの美女は上の階へと駆け上がっていったのです。青年たちは仲間の部屋を訪ねました。この人物のお別れの晩餐会だったのです。彼らは本格的に酒を飲みました。飲み過ぎたかもしれません。食事がすむと青年たちは告白の手紙を書き、その手紙を持って階上に上がっていったのです。小間使が出てきたので、彼らは手紙を渡し、小間使に向かって、自分たちは今にも死んでしまいそうなほど恋焦がれているのだと宣言しました。そこへ、まるでソーセージみたいな形の頬ひげを生やした紳士が茹でたエビのように真っ赤な顔になって出て来て、ここは自分の妻以外に誰も住んでいないと言って、二人を追い払ったのです。この人たちはなんと、お上に仕える九等文官とその奥方の幸せカップルだったんですよ。この九等文官氏が苦情を言ってきたので、ぼくが調停役になったわけです」。事件の当事者は、ヴロンスキーと仲の良いペトリツキーと、同僚のケドロフ公爵だった。夫婦はまだ結婚して半年とのことで、その若い妻が母親と一緒に教会を訪れていたところ、身重のために急に体調が悪くなり、たまりかねて通りかかった辻馬車をつかまえて家に向かっていた。ところが将校たちが後を追いかけてくるものだから妻はすっかり怯えてしまい、ますます気分が悪くなって、階段を駆け上がった。夫が帰宅してみると、ベルの音がして、酔っ払った将校たちが手紙をかざしているので、外に突き出したという次第だった。彼は厳罰を要求していた。

 

6章

 

公爵夫人ベッツィは最後の幕の終わりを待たずに劇場を出た。家に帰って化粧室に入り、顔に白粉をはたいて、髪を直し、客間に茶を出すように命じたときには、彼女の大きな屋敷に次々と馬車が駆けつけてきた。客たちは二手に分かれて陣取った。ひとつは女主人と一緒にサモワールの周りに、もうひとつは公爵夫人の周りに集まった。談話はしばらくの間最近の社会的ニュース、演劇、知人のうわさという三つの必然的な話題の間を揺れ動いていたが、結局は人の陰口になっていった。「アンナさんはモスクワから帰ってすごくお変わりになったわ。どこか変なのよ」アンナの女友達が言った。「いちばん大事な変化は、あの方がアレクセイ・ヴロンスキーという影をつれていらしたことよ」公使夫人が言った。「影のある女性というのは、たいてい先行きよくない目にあいますわよ」アンナの友達が言った。「そんなことおっしゃると罰が当たりますわよ」話を聞きつけたミャーフカヤ公爵夫人が不意にそう言い放った。「アンナさんはすばらしい女性ですわ。ご主人のほうはわたし苦手ですけど、奥さまのことは大好きですわ。わたしはアンナさんを皆さんの餌食にはさせませんわ。あんなにすばらしい、愛らしい方なんですもの。仮に誰も彼もがあの方に惚れ込んで、影のように付きまとったとして、それがあの方にとってどうだとおっしゃるの?」こうしてアンナの友達にお灸をすえた後で、ミャーフカヤ公爵夫人は席を立ち、公使夫人と連れ立ってテーブル席に合流した。「あら、やっといらしていただいたわね」女主人はそう言ってヴロンスキーに向かってにっこり微笑んだ。

 

7章

 

入り口のドアのほうで足音が聞こえると、それがアンナだと察したベッツィ夫人はヴロンスキーを振り向いた。ヴロンスキーはさも嬉しそうに、まじまじと、しかし同時に臆したような目つきで入ってくる女性の姿を見つめながら、彼はゆっくりと立ち上がった。アンナが客間に入ってきた。ヴロンスキーは深々と一礼すると彼女のために椅子を引いた。新客の来訪で一度中断した会話が、ちょうど風にあおられたランプの灯のように、またゆらゆらと燃えはじめた。アンナが彼に話しかけた。「わたしモスクワから手紙を受け取りましたわ。それによるとあのシチェルバツキー家のキティさんが、ひどくお加減が悪いんですって」「お手紙の内容は?」アンナは彼の質問に答えずに、「あなたのしたことは悪いことです。とても悪いことですよ」と言った。「ぼくだって承知ですよ。でも、ぼくがそんなことをしたのは、いったい誰のせいでしょう?」「どうしてそんなことをわたしにおっしゃるの?」「わけはあなたがご存知でしょう」「そんな言い方は、ただあなたに情がないということを証明しているだけですわ」「あなたがさっきお話しになった件は、過ちであって、恋愛ではありませんでした」「今日、わたしがまいったのは、こんなことは終わりにしなくてはいけないと申し上げるためです。もしもおっしゃるようにわたしを好いていてくださるのなら、わたしが安らかな気持ちでいられるようにしてください」「あなたはぼくにとって命そのものです。ですから前途には、自分にとってもあなたにとっても、安らぎの可能性など見出すことはできません。ぼくの願いはただひとつ。今のように期待する権利、苦しむ権利をぼくにくださいということだけです。でももしそれが無理でしたら、ただ消えろと命じてくだされば、ぼくは姿を消します」「わたしはあなたをどこへも追い払いたいなんて思っていません」「でしたら、何も変えないで、全部今のままにしておいてください」ヴロンスキーは声を震わせて言った。そのとき、アンナの夫カレーニンが客間に入ってきた。

 

8章

 

レーニンは、妻がヴロンスキーと二人きりで離れたテーブルについて、なにやら夢中で話し込んでいるのを、べつに特別なことともはしたないこととも思わなかった。だが客間にいた他の人々が、その光景を何か特別な、はしたないことと受け止めているのに気づいてしまうと、彼にもそれがはしたないまねに思えてきたのだった。彼はそのことを妻に言う必要があると判断した。アンナはまだ帰っていなかった。先ほど妻と話し合う必要があると心に決めた際には、それはとても簡単でたやすいことに思えた。だが今こうしてこの新しい事態を検討しはじめてみると、それが極めて複雑でむずかしいことに思えるのだった。妻が他人を愛する可能性という問題がはじめて彼の頭に浮かび、彼はその事態に戦慄を覚えたのだった。カレーニンの頭の中に、これから妻にしてやるべき説教の中身が、すっかり明瞭に組み立てられていった。「わたしは次のことがらをはっきりと言っておかなくてはならない。第一に世間の意見の意味および体面の意味を説明する。第二に結婚の意味を宗教的な観点から説明する。第三に、もしも必要があれば、万が一の場合に息子が不幸になるかもしれないということを指摘する。第四に彼女自身が不幸になるということを指摘するのだ」。階段を女性の足音が上がってきた。

 

9章

 

アンナはうつむき加減で歩いてきた。夫に気づくと顔を上げ、まるで目が覚めたかのようににっこり微笑んだ。「アンナ、おまえに話がある」「わたしに? いったいどうなさったの? 何のお話かしら?」「アンナ、おまえにひとつ警告しておくことがある」「警告ですって?」「つまり油断から軽率な振舞いをすると、世間のうわさの種になりかねない。おまえが今日ヴロンスキー伯爵とあまりに夢中になって話をしていたのは、皆に注目されていたよ。わたしは嫉妬というのは卑しい屈辱的な感情だと思っているから、けっしてそんな感情に身を任せようとは思わない。だが一定のたしなみの法というものはあって、それを犯すと必ず罰を受けるのだ。今日のことは別にわたしが気づいたのではなく、あの場の雰囲気から察するに、みんなが気づいていたんだ。おまえが何かたしなみに外れた振舞いをして、しかもそれを続けていたということを」「まったく、何ひとつわかりませんわ。あなたお加減が悪いのよ」そう言ってアンナはドアから出て行こうとしたが、夫はそれを押しとどめるように前に踏み出した。「だったら、その先をうかがいましょう」「おまえの気持ちはおまえの良心に任せよう。だがわたしにはおまえの前で、自分の前で、そして神の前で、おまえの義務をおまえに示すつとめがある。わたしとおまえの人生はひとつに結びついている。しかも結びつけたのは人間ではなく神だ。この絆を断つことができるのは犯罪のみであり、その種の犯罪は思い罰をもって報いられるのだ」「何もわかりませんわ。あらたいへん、猛烈に眠たくなってきた!」「もしかしたらわたしの妄想が生んだ言葉かもしれない。もしそうだとしたら、おまえの許しを請うよ。だがもしもおまえにたとえほんの少しでも心当たりがあるなら、おまえにもひとつ考えてほしいし、もしも何か言いたいことが胸にあるならば、どうかわたしに話してほしいんだ……」「わたしにはお話しすることなどありません。それに、ほんとうにもう寝る時間ですわ」。カレーニンはため息をつくと、もはやそれ以上何も言わず、寝室へ入っていった。「遅いわ、遅い、もう遅いのよ」アンナは微笑んでつぶやいた。

 

10章

 

この晩を境にして、カレーニンにとっても妻のアンナにとっても新しい生活が始まった。何も特別な出来事が起こったわけではない。アンナはいつもどおり社交界に、とりわけ頻繁にベッツィ公爵夫人の家に出入りして、いたるところでヴロンスキーと会っていた。カレーニンはそれを見ていながら何もすることができなかった。かれが説明を要求するたびに、妻は屈託のない無理解ぶりとでも言うべき難攻不落の壁で対抗するのであった。外から見れば二人の関係は変わらなかったが、中身は激変していた。カレーニンは自分の無力を実感していた。この件を考えるたびに、彼はもう一度努力してみる必要がある、善意と優しさと信念をもってすれば、まだ彼女を救い、正気づかせる道はあると感じ、毎日彼女と話をしようとつとめていた。しかし妻に話を切り出すたびに、彼女を支配している悪と欺瞞の霊に自分まで支配されてしまうのを感じ、意図していたのとはまったく違うことを、まったく違う調子でしゃべっているのだった。

 

11章

 

ヴロンスキーにとっては、ほとんど丸一年と思えるほど長い間、これまでのすべての願望に取ってかわる唯一無二の願いだったこと、そしてアンナにとってはありうべくもない、恐ろしい、またそれゆえに魅惑的な幸せの夢となっていたこと̶̶その願望が、ついに実現した。真っ青になって下あごを震わせながら、彼は彼女の体の上に立ち、ひたすら落ち着いてくれと懇願していた。何をどう落ち着けと言っているのか、自分でもわからぬままに。「アンナさん! アンナさん!」彼が大声を出せば出すほど、彼女はますますうなだれるばかりだった。かつてはプライドが高くほがらかだったのに、今では恥辱にまみれてしまったその頭を。「ああ、神さま! どうかお許しを!」かすれた声で彼女は言った。自分があまりに罪深い、悪い女に思えて、もはやただ卑屈に許しを請うしかないと感じられた。「何もかも終わったわ」彼女は言った。「わたしにはあなたのほかには何もない。覚えておいて」「自分の命に等しいものを忘れるはずがありません。この幸せの瞬間のために……」「何が幸せなの!」忌まわしさと恐怖のこもった声で彼女が言うと、その恐怖が彼にも伝染した。「お願い、もうひとことも言わないで」彼女はすばやく起き上がると、彼から身を離した。「ひとことも言わないで」そうくりかえすと、彼には奇妙に見える冷たい絶望の表情を浮かべて、彼女は去っていった。

 

1章から3章は、ヴロンスキーにフラれて健康を崩したキティの物語。

有名な医者の診断を受けるが、この有名医もヤブ医者で、

イイ加減な診断しかできなかった。

医者と入れ替わりにドリーが訪れる。

ドリーはキティを慰めるが、

「わたしは悲しむこともないし、慰めてもらうこともないわ。わたしはプライドが高いから、自分を愛してくれない相手を愛するようなまねもけっしてしません」

と言って、ドリーすらも拒絶する。

キティの癒しがたい悲痛の種は、

リョーヴィンがプロポーズしてくれたのに自分が断ったこと、

しかもヴロンスキーからは騙されたことにあった。

そしてキティはリョーヴィンを愛し、

ヴロンスキーを憎む気持ちになっていく。

 

4章からは、アンナとヴロンスキーの関係が動き出す。

それに伴って二人の関係を噂する人々も多くなり、

アンナの夫カレーニン

「油断から軽率な振舞いをすると、世間のうわさの種になりかねない。おまえが今日ヴロンスキー伯爵とあまりに夢中になって話をしていたのは、皆に注目されていたよ」

と警告する。

だが、アンナは聞く耳を持たない。

9章は、「遅いわ、遅い、もう遅いのよ」とアンナがつぶやいて終わる。

 

そして、11章。

アンナとヴロンスキーは、出会ってから1年後、

ついに結ばれる。(肉体関係が成立する)

「何もかも終わったわ。わたしにはあなたのほかには何もない。覚えておいて」

アンナのこの言葉の意味するものとは……

アンナとヴロンスキーは今後どうなっていくのか?

 

12章以降を覗くと、しばらくはリョーヴィンのその後が描かれているようだ。

リョーヴィンとキティの関係も気になるところ。

私はどちらかというと、リョーヴィンとキティの方を注視している。

早く先を読み進めたい。