一日の王

「背には嚢、手には杖。一日の王が出発する」尾崎喜八

映画『恋は雨上がりのように』(2回目の鑑賞)……1回目の鑑賞よりも深い感動……




私の大好きな小松菜奈の主演作『恋は雨上がりのように』。
公開初日の5月25日に1回目の鑑賞をした。
そして、先日、2回目の鑑賞をした。

2回目の鑑賞になると、
普通は、1回目よりも感動が薄れるような気がするが、
「あら不思議」
1回目よりも深く感動できたのだ。
物語の展開は分っているし、
感動ポイントも分っている筈なのだが、
分っているが故に……とも言うべきか、
感動する準備ができているからか、
1回目にも増して感動してしまったのだ。
(1回目のレビュー及びストーリー紹介はコチラから)

2回目のレビューなので、
前回のレビューでは書いていないことを中心にまとめたいと思う。

その前に、(最初から脱線してしまうが……)
恋は雨上がりのように』は小松菜奈の主演作ということもあって、
公開日前後には、
映画の宣伝のために多くのバラエティ番組に小松菜奈が出演していたのだが、
(TVでも小松菜奈を多く観ることができて私も嬉しかった)
2018年5月26日(土)に放送された『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)でのこと。


「天才芸術家の孫が明かす! ピカソの知られざるプライベート」
と題して、
画家パブロ・ピカソの孫にあたり、
現代絵画専門の美術歴史家であるダイアナ・ウィドマイヤー・ピカソさんが授業を行ったときのエピソード。


パブロ・ピカソ
ダイアナ・ウィドマイヤー・ピカソさんの祖母であるマリー・テレーズ(ピカソ作品のモデルで最も有名な愛人)に一目惚れをして、
街で声をかけて交際が始まるのだが、
このときの二人の年齢が、
パブロ・ピカソ45歳、マリー・テレーズ17歳だったのだ。
この年齢、
恋は雨上がりのように』の主人公である、
近藤正己(大泉洋)と橘あきら(小松菜奈)の設定年齢と同じだったので、
〈ああそうか、この45歳と17歳という年齢が同じだったので大泉洋小松菜奈が呼ばれたのだな〉
と勝手に解釈して観ていたのだが、
番組ではそのことに関してまったく触れず、
大泉洋小松菜奈が「私たちが出演した映画と二人の年齢が同じですね」と言うこともなく、
番組は終了してしまった。
45歳と17歳という年齢は単なる偶然だったようで、
(ダイアナ・ウィドマイヤー・ピカソさんの授業に、たまたま大泉洋小松菜奈が呼ばれただけのようで……)
番組スタッフや出演者が気づいていれば、もっと内容を広げられたのに……と、
残念に思ったことであった。


恋は雨上がりのように』で、
女子高生の橘あきらが、中年男の店長・近藤正己を好きになることを、
「17歳の女子高生が45歳のおじさんを好きになるなんてありえない」
などと批判する人もいるが、
実際にあった例として、
パブロ・ピカソとマリー・テレーズのことをもっと深く掘り下げたなら、
より面白い番組になったのに……と思った。


では、ここからは、あらためて、
1回目鑑賞のときは気づかなかったことや、
1回目のレビューでは書いていなかったなどを箇条書きで記していきたい。


①橘あきら(小松菜奈)から近藤正己(大泉洋)への「好きです」という告白は5回。
数えてみたら、そう、5回もあったんですね。
その5回の告白が、すべてトーンが違っていて、
それでいて、わざとらしさがなく、自然で、とても感じが良かった。



②映画のタイトルに“雨”が入っているので、当然のことながら“雨”のシーンが多い。
“雨”で思い出すのは、サマセット・モームの短編小説『雨』。


狂信的な布教への情熱に燃える宣教師が、
任地へ向う途中、検疫のために南洋の小島に上陸する。
彼はここで同じ船の船客であるいかがわしい女の教化に乗りだすが、
重く間断なく降り続く雨が彼の理性をかき乱してしまう……


というストーリー。
衝撃的な結末が待っているが、
かように“雨”は理性を狂わせる。
この映画でも、雨の中で告白するシーンがある。

「……あたし、やっぱり店長のこと、好きです」

「橘さんは、いつも雨の日に突然現れるね」


“雨”は果たして近藤正己(大泉洋)の理性をも狂わせるのか……



小松菜奈が疾走するシーンで涙が出てきた。
1回目の鑑賞では泣かなかったのに、
2回目の鑑賞では涙が出てきた。
なぜだか、小松菜奈が走っている姿を見て、いたく感動してしまったのだ。
躍動する肉体への憧憬なのか?
過ぎ去ってしまった己の若き頃を思い出してしまったのか?
単に年を取って涙もろくなっただけなのか?



④近藤正己(大泉洋)が発する言葉が素晴らしい。
病気の近藤を訪ねてきたあきらに、近藤が発した言葉。

「俺は橘さんといると、忘れていた、かけがえのない財産ってヤツを思い出すことができるよ……」

イイ言葉だ。
素敵な人というのは、その人を見ているだけで、
心に仕舞っておいた大切なものを思い出させる。
小松菜奈がそうであるように……



⑤ガチャガチャを何度も回すあきらが、いじらしくて可愛い。
好きな人と仲良くなれる力のあるキーホルダーが欲しくて、
何度もガチャガチャを回すあきら。


はたして目的のキーホルダーは手に入れることができるのか?



小松菜奈大泉洋が、この映画で一番印象に残っているシーンは……
ラストシーン(土手での再会のシーン)とのこと。




このシーンのことを、私は、
1回目のレビューのときに、次のように記している。

ちょっとネタバレになるが、
ラストに小松菜奈の顔が大写しになる。
ラストにヒロインの“笑顔”をアップするのはアイドル映画の王道であるが、
本作では、“笑顔”ではなく、小松菜奈の“泣き顔”であった。
このときの小松菜奈の目をよく見てもらいたい。
目が真っ赤なのだ。泣きはらしているのだ。

私がいつも大事にしているのはそのときの感情で、それは小松菜奈としてじゃなく、役の感情です。実はもともと泣くお芝居は苦手で、気持ちを作るのに時間がかかってしまったりするんですが、絶対に妥協したくないなって思っていて。極端に言えばお客さんが見たとき、例え目薬でも分らないかもしれないけど、その後自分はずっと(泣けなかったことを)引きずっていっちゃうと思うし、自分に負けた気がすると思ったんです。(『坂道のアポロン』のパンフレットより)

だから本物の涙しか流さないと、小松菜奈は語っていた。
本作『恋は雨上がりのように』では、
ラストに限らず、泣くシーンが案外多いのだが、
たぶん、すべてが、本物の涙であろうと思われる。


「たぶん、すべてが、本物の涙であろうと思われる」
と書いたのだが、
これは本当であった。

2回目の鑑賞のときにパンフレット(720円)を買ったのだが、
この中に「この映画で一番印象に残っているシーンは?」との問いがあり、
小松菜奈大泉洋、両人ともに、
あのラストシーン(土手での再会のシーン)を挙げているのだ。

小松菜奈は語る。

土手での再会シーンでは、まさにラストシーン!って感じでとってもお天気が良かったので印象に残っています。監督と大泉さんと3人で話している時に、「これはいつぶりの再会なんですか?」って話になって、監督が「大体半年ぶりくらいですね」ってお答えになったんです。その時大泉さんが「ちょっと泣きそうになった」とおっしゃったんですが、私も全く同じ気持ちで、大泉さんとは毎日撮影でお会いしていたのに、すごく久しぶり感があってリハーサルから涙が止まりませんでした。あのシーンを演じて、店長のことを好きになってよかったなって思えたし、あきらのことも愛せた気がしましたね。

大泉洋も、

(あきらとのシーンで特に印象に残っているシーンは)たくさんありますが、やっぱり土手でのラストシーンかな。約半年後に再会した2人が、それぞれの道を歩いていくシーンだったんですが、小松さんの表情が素晴らしかったですね。

と答えている。

小松菜奈の目が赤かったのは、
リハーサルから涙が止まらなかったからなのだ。
そして、このラストシーンの小松菜奈の表情が、とにかく素晴らしい。
このラストシーンを見るために、
また最初から見たいくらい。(また見に行くけどね)



⑦“今の小松菜奈の美”をたくさん保存しておいてもらいたい。
小松菜奈のこれまでの出演作(全部ではない)を、
むりやり三つのジャンルに分類すると、

【過激青春三部作】
『渇き。』(2014年6月27日公開)
ディストラクション・ベイビーズ』(2016年5月21日公開)
溺れるナイフ』(2016年11月5日公開)

【キラキラ青春三部作】
近キョリ恋愛』(2014年10月11日公開)
バクマン。』(2015年10月3日公開)
黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016年2月27日公開)

【純愛青春三部作】
ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016年12月17日公開)
坂道のアポロン』(2018年3月10日公開)
恋は雨上がりのように』(2018年5月25日公開)


となるような気がする。
この中で、【純愛青春三部作】での小松菜奈が最も美しい。
最も新しく撮られた3作品なので、
女性として完成された美が楽しめる。
そういう意味で、
映画関係者は、小松菜奈をもっといろんな映画に出演させて、
“今の小松菜奈の美”を保存しておいてもらいたいと思う。
次の小松菜奈の出演作は、
中島哲也監督作品『来る』(2019年公開予定)である。
小松菜奈にとっては、『渇き。』以来の中島哲也監督作品への出演となる。
岡田准一黒木華松たか子妻夫木聡など、
私の好きな俳優との共演も楽しみ。


まだまだ書きたいことはあるが、
それは3回目の鑑賞の後にでも……
皆さんも、映画館で、ぜひぜひ。